Faust
風のそよぎ、ほの暖かく、緑につつまれし野辺に満ち、黄昏どき、甘き香りと、霧の狭衣(さごろも)を呼びおろせば、いましら楽しき平和を声低くささやき、心をゆすりて稚児の熟睡(うまい)にさそえ。かくてこの疲れたる人の眼に、一日の門の戸をとざせよ。今回は「ファウスト」よりゲーテの詩です。自分の一番好きな部分です。
夜は早や地上にくだりぬ。星と星とは浄(きよ)く寄り添い、大いなる光、小さき火花、近くにきらめに、遠くに輝く。ここ、湖に映りてはきらめき、かしこ、澄める夜空には輝く。おおどかに照りわたる月影は、ふかき憩いの幸を護れり。
いく時か早や過ぎ去りて、悩みも幸も共に消えぬ。予(あらかじ)め知れよ、汝は癒えなん。新たなる夜明けをたのめ。谷々は緑し、岡は高まり、茂る木立もて憩いの陰をつくれり。しろがねの波と揺るるは、とりいれを待つ穀物の穂ぞ。
汝(なれ)が望みを相つぎてはたすべく、いざかの朝の光を仰げ。汝はただ軽やかに捕らわれしのみ、眠りは殻なり、脱ぎすてよ。世の人みな臆しためらうとも、雄々しく起ちて事をなせ。ことわり知りて疾(と)く手を著(つ)くるすぐれし人のなしえぬことあらんや。ゲーテ・ファウスト より 相良守峯訳(岩波文庫)
So it doesn't matter. I don't give up. I'll try again!



